日蓮今生は

 日蓮今生は貧窮下賤の者と生れ、旃陀羅が家より出でたり。心にこそ少し法華経を信じたる様なれども、身は人身に似て畜身なり。魚鳥を混丸して赤白二諦と せり。其の中に識神をやどす。濁水に月の映れるが如し。糞嚢に金を包めるなるべし。心は法華経を信ずる故に、梵天帝釈もなほ恐れと思はず。身は畜生の身な り、色身不相応の故に愚者のあなづる道理なり。

 日蓮今生は貧窮下賤の者と生れ、旃陀羅が家より出でたり。心にこそ少し法華経を信じたる様なれども、身は人身に似て畜身なり。魚鳥を混丸して赤白二諦と せり。其の中に識神をやどす。濁水に月の映れるが如し。糞嚢に金を包めるなるべし。心は法華経を信ずる故に、梵天帝釈もなほ恐れと思はず。身は畜生の身な り、色身不相応の故に愚者のあなづる道理なり。心も又身に対すればこそ月金にもたとふれ。 などと、さらに詳しくその出生の旃陀羅であることを書いておられるのである。すなわち日蓮は、自ら旃陀羅の子たることを明らかにし、畜身と云い、畜生の身 と云い、またこれを濁水糞嚢にたとえ、色身不相応の故に愚者の侮るもまた故ありなどと云って、自らその出身の極めて賤しき事を認めておられるのである。そ してこれに依って当時世人は、その出身の賤しきことによって、かなりこれを侮っていた様子が知られるのである。  旃陀羅とは印度における屠殺業者の事である。そして我が国では、古くこれをエタに相当するものとして認められていた。日蓮とほぼ時代を同じゅうした「塵 袋」に、 キヨメをヱタといふは如何なる詞ぞ。穢多 飛蚊症