夫 (坐りなほし)いらつしやい。御無沙汰してゐます。
母 今ごはんですか。朝つぱらからどうも……実はね……。
妻 まあ、お敷きなさい、母さん。
母 お出かけで忙しいんだらうから、あ
母 今ごはんですか。朝つぱらからどうも……実はね……。
妻 まあ、お敷きなさい、母さん。
母 お出かけで忙しいんだらうから、あ
夫 (坐りなほし)いらつしやい。御無沙汰してゐます。
母 今ごはんですか。朝つぱらからどうも……実はね……。
妻 まあ、お敷きなさい、母さん。
母 お出かけで忙しいんだらうから、あたしには構はないで……お茶なんかあとでいゝから、お前お給仕をしておあげ。
妻 いゝのよ、勝手に食べさしておけば……あゝこの方ね、うちでそら、お世話してる方なの。鳥羽さんておつしやる詩人の方よ。これあたくしの母……。
母 はじめまして……どうぞ、さあ……。
妻 まあ、こつちへいらつしやい。何んのお話し一体、ゆつくりでいゝでせう。
母 あゝ、そりやもうなんだけど……実は門司の伯父さんね。今危いんだとさ。
妻 危いつて御病気だつたの。
母
それが急のことらしいよ。あたしも一度御見舞に行きたいと思ふんだけど、何しろこんな事情だしね……昨夜お前が帰つてから、手紙が来たのさ。(帯の間
から手紙を出して見せる)危いつていふもんの、かういふ事が云へるくらゐだから、お前まだ気はたしかなんだよ。とにかくそこに書いてある通り、一人も子供
はないし……。
妻 (手紙を読みながら)一寸……いま読んでるんだから……まあ財産を分けて下さるつていふのね。(夫は急に顔をあげて、妻の方を見る)
母 をひや姪つて云つても、うちの兄弟三人きりだからね。姉さんとお前と厚に、五万円宛つていふんだらう。
2014.03.11 09:19
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