さうですとも


色眼鏡  さうですとも、警察の介入するやうな問題ぢやありませんよ。仮に裁判沙汰になつたとしても、証人は、椎茸栽培の権威以外は役に立たんのです。甲の権威と乙の権威とは、これや、両々対峙して、相譲らうとはしないでせう。 警官  さういふもんだらうね。 ノロミ  営業妨害の事実を、こつちではちやんと証拠だてる用意がある。 色眼鏡  こちらも、君たちのインチキ性と、僕に対する人権侵害の事実をつきつけてやる。証人は、この通り、こゝにゐられる……。 警官  わしかね。わしは椎茸のことはまるでわからんよ。 色眼鏡  僕の自由行動を束縛しようといふ、この連中の言ひ分を、さつきから聞いてゐられる筈だ。 警官  なるほど、そのことか……意思表示はあつたね。 ノロミ  こつちの要求が不当な場合はね。あゝ、よろしいとも……。出るところへ出ませう。 警官  出るところへ出るといふ話にきまつたのかね。 ノロミ  次第によつては、止むを得んといふ……。 色眼鏡  なに、僕はたゞ正々堂々と、法廷で、椎茸栽培の理論を一席弁じればいゝのさ。裁判官が椎茸を作りたくなつても、これや、僕の手柄ぢやない。菌種は君の方から廻してやるさ。 大判プリント 格安

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