その時以来


 その時以来、世の中はだんだん愉快になって来ました。お伽噺はうち続きました。たいてい毎日、何かしら新しいことが起りました。夜、セエラが戸を開けるごとに、室内には何か新しい装飾が施され、何か少しずつ居心地よくなっているのでした。そうこうするうち、屋根裏部屋は、いろいろの珍らしい贅沢なものの一杯ある美しい部屋になってしまいました。朝出て行く時には、前の晩の食べ残しが置いてあるのに、夜帰って来てみると、食べ残しは綺麗に片付けられ、また別な美味が置き並べられてあるのでした。

 セエラはこうした幸福と慰めとのため、だんだん健康になり、希望に充ちて来ました。相変らず皆からはひどく扱われましたが、どんな時にも、屋根裏に帰りさえすればと思うと、辛いとも思いませんでした。

「セエラ・クルウは、大変丈夫そうになったじゃアないか。」と、ミンチン先生は不服そうに妹にいいました。

「ほんとに、だんだん肥って来たようですね。まるで餓えた烏みたいになりかけていたのに。」

「餓えただって? 食べたいだけ食べさしてあるのに、餓えるはずはないじゃないか。」

 アメリア嬢は、へまな口を辷らしたと思って、おどおどと、

「そ、そりゃアそうですけど。」と、合槌をうちました。

「あの子の年で、あんな風なのは、不愉快だよ。」

「あんな風なって?」 個別指導塾・家庭教師の塾長ブログ 中学・高校・大学受験|足立区・北区

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