この獣は犬のような大きな奴で毛は余り深くない。それが夏の間は赤茶色で実に綺麗です。ちょうど私が見た時分にはその色でありましたが、冬になると白灰色に変ずるそうです。その灰色に変じたのは私は見たことはないですがチベット人の誰でもいう説明によるとその事は確実らしい。ところでその耳は鋭く立って居りましてその顔付の獰猛にして残忍酷薄なる様子を示して居ることは一見恐るべきもので、
現に旅人でも一人位であると不意に噛みつかれ喰い殺されることもあるそうです。そういう奴が五、六疋向うの山の端にやって来たのを兄弟三人がこちらから発砲して殺したその時の顔色を見ると、非常に愉快を感じたらしく見えたです。その非常に愉快に感じて居る残忍の有様を見てこの様子じゃ人を殺して随分愉快を感ずる方であろう、こりゃどうも危ないという感覚が起って来たです。
第三十九回 兄弟喧嘩
霊跡とお別れ その翌日はやはり雪が降ったものですからそこへ泊り込みになったです。その時宿主らの連れて居る猟犬は兎狩に行って兎を喰殺して帰って来るという始末で大変に殺伐な光景が現われて来た。その翌九月十五日にだんだん東に向って波動状の山を踰えてほとんど峰の頂上に着きました。ところで宿主のいいますには、もうここでお別れだといいますから何でお別れかと聞くと、ずっと西の方に見えて居るマナサルワ湖と湖水の中央から南方に見えて居るマンリー雪峰を指して、最も尊い霊跡を離れたから我々はこれから本当の仕事に掛るんだ、だからここで礼拝してお別れを告げてまた後にもう一遍ここへ巡礼に来た時お逢い申せるように願いを掛けて置くとこう申して礼拝をするから、私もそれに傚って礼拝をしてそこで余程感慨に打たれたです。情報商材 レビュー
2013.11.28 05:35
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